無線LAN導入による観測所間のネットワーク接続
太陽研の塩川先生から、鹿児島観測所の上の台地と観測所(距離約300m)のネットワークを、 無線LANで接続してほしいとの依頼がありました。以下はその導入記録です。 ●導入の動機 鹿児島観測所(垂水)の上の台地では、フラックスゲート磁力計や、VLF観測用アンテナが設置 されています。これまで、受信したアナログ信号は上の台地のアンプ小屋に集められ、そこから メタルケーブルで約300m離れた観測所に送られていました。観測所には、観測用(データ取得用) PCが設置され、入力されたアナログ信号をA/D変換して、デジタルデータとして保存します。そして そのデータをネットワークを通して定期的に太陽研のサーバーに送っていました(現状でも、一部の 観測データはそうしています)。 ところが最近、電通大のVLF観測装置や磁力計のPC2台が上の台地のアンプ小屋に設置されました。 さらに、スタンフォード大のVLF観測PCが追加されることになりました。 ここで問題となるのが、上の台地のアンプ小屋がネットワーク的に孤立していることです。現状の ままでは、この3台の観測データを、人がわざわざ取りに行く必要があります。またPCの動作 状態を外部からチェックすることができないという問題もあります。 そこで、無線LANを導入し、上の台地のアンプ小屋と観測所間をネットワークで接続し、 これらの問題を解決しようということになりました。また、現状の300mのメタルケーブルが老朽化 により、使えなくなりつつあり、その代替手段が必要という目的もありました。 ●無線LANの構成 無線LANの主な構成品は、無線LANアクセスポイント、アンテナ、アクセスポイントとアンテナを 接続する同軸ケーブル2本です。これらを、上の台地と観測所にそれぞれ設置します。 同軸ケーブルを2本使っているのは、伝送方式が802.11nのためです。802.11nはMIMOに対応して いるため、アンテナの数が多いほど、伝送速度が速くなります。片側のアンテナは1つに見えますが、 実はこの中に垂直偏波と水平偏波用のアンテナ2台が内蔵されており、2つの電波が送受信されて います。この2台のアンテナを使用することにより、伝送速度が最大300Mbps(理論値)になります。 802.11nは5GHz帯と2.4GHz帯の両方が使えますが、今回は、通信距離と伝送速度を稼ぎたい ため、自由空間損失が少ない2.4GHz帯を使用しました。 また、鹿児島観測所は、落雷が多いため、その対策をかなりしています。 ●具体的な機能 上の台地と観測所を無線LANで接続することにより、電通大とスタンフォード大は、上の台地の観測PCに アクセス可能になります。具体的には、scpやsftpによるデータ転送やリモートデスクトップやpcAnywhere などによるPCの状態監視です。 外部からは、太陽研ネットワーク→鹿児島ネットワークを経由することで、アクセスできます。 ●設置風景 日程的に余裕がなかったことと、スタンフォード大のVLF観測装置の設置作業が重なっていたため、 計画通り行くかどうか危ぶまれましたが、問題なくインストールできました。 ●現状は 2012年11月の導入から半年経ちますが、今のところ問題なく稼働しています。 無線LANの伝送速度は、平均で100Mbpsくらい出ています。 今後は、雷の多い季節になりますので、継続して様子を見る必要があります。 |