630.0nm大気光イメージング観測データを用いた中緯度TID活動度の季節変化

猪原智昭、塩川和夫、大塚雄一、小川忠彦
名古屋大学太陽地球環境研究所

Seasonal Variation of Mid-latitude Traveling Ionospheric Disturbances
Observed in OI (630nm) Airglow Images

C. Ihara, K. Shiokawa, Y. Otsuka, T. Ogawa
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University

    Traveling Ionospheric Disturbances (TID) are one of the outstanding phenomena
in the mid-latitude thermosphere and ionosphere. Recently, it has become possible
to observe two-demensional pattern of TIDs using optical insturuments and
multi-point GPS networks. However, statistical analysis using these two-demensional
data has not been done yet particularly in the Japanese longitudinal sector.
  Since October 1998, two all-sky imagers have observed OI (630nm) airglow emission
(altitude 200-300km) at Rikubetsu (43.5N,143.8E) and Shigaraki (34.9N, 136.1E). We
study seasonal variations of mid-latitude TID activity using the imaging data observed
at these two sites from October 1998 to September 2000.

 中緯度熱圏・電離圏を代表する現象に、伝搬性電離圏擾乱(TID)が挙げられる。
その機構については、Perkins [JGR, 1973]等の理論的側面からの研究、Ionosonde
等のレーダーによる観測的側面からの研究等がなされてきた。さらに近年、全天型
CCDカメラを使った大気光観測や、汎地球測位システム(GPS)を使った電離圏全
電子数の観測によって、その2次元的な観測データも得られるようになってきている。
しかし、このような2次元像を用いて日本上空のTIDを統計的に調べることは、まだ
行われていない。
 名古屋大学太陽地球環境研究所では、複数の光学観測機器による超高層大気イ
メージングシステム(Optical Mesosphere Thermosphere Imagers : OMTI)を開発し、
北海道陸別観測室(43.5°N, 143.8°E)と滋賀県の京都大学信楽MU観測所
(34.9°N, 136.1°E)において、1998年10月より夜間大気光の連続観測を行っている。
その一部である全天大気光イメージャーから、OI(630nm)大気光の2次元イメージン
グデータを得ることができる。OI(630nm)の発光領域は高度200-300kmに分布するため、
そのデータを解析することによって、日本上空の中規模TIDの2次元的な様子がわかる。
これまでに1998年10月から2000年8月までのデータについて統計的に解析を行った。
その結果、水平スケールが100-500km程度の中規模TIDについて、信楽、陸別ともに
@発生頻度は夏に極大、冬に第2極大をもつこと、A伝搬方向は季節に依らず南西
方向であること、B周期は0.25-2.5時間に分布していること、が明らかになった。さらに、
信楽に比べて陸別のほうが、1)年間を通して5-10%発生頻度が高いこと、2)伝搬
速度が平均10m/s程度速い(陸別では平均70.9m/s、信楽では平均63.1m/s)こと、
3)波長は30km短い(陸別では平均182.9km、信楽では平均213.8km)こと、がわか
ってきた。本講演では、さらにTIDの振幅についても定量的に評価を行い、2点での
統計結果を比較し、中規模TIDの活動度の季節変動、緯度による違いを調べた結果
を報告する。



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