平成12年11月29日午後22時50分から24時頃(日本時間)にかけて、 北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別総合観測室で、 磁気嵐中のサブストームに伴うごく弱い低緯度オーロラを観測した。 このオーロラは数日前から続いていた磁気嵐に伴って発生している。 このオーロラの最大の明るさは午後23時30分で447R(レイリー、 明るさの単位、観測波長は酸素原子の発光輝線である630nm)であった。 この明るさではオーロラと呼ぶよりも、大気光(通常50ー100R程度の 明るさ)の増光、と呼んだ方がよいかもしれないが、 このオーロラの見え始め(22時50分)は、磁気嵐の主相に 起きた非常に大きなサブストームと同期しており、こういった特徴は 1992年2月26,27,29日、5月10日に北海道で観測された 低緯度オーロラの特徴と一致している。 観測は掃天フォトメータ、全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、 固定型フォトメータを用いて行われた。以下にその図を示す。 今回のオーロラは肉眼では見えない明るさである (肉眼で見える波長630nmの赤い光の明るさは個人差はあるが10kR程度) 銀河の森天文台よりご提供いただいた1分間露出による写真も以下につける。
0. 写真 Picture 2000年11月29日午後11時03分、陸別町・銀河の森天文台より 北の空を撮影。赤い光がオーロラの光。左側の白い光や地平線近くの緑がかった 光は人工の光(街明かりなど)と思われる。(提供:陸別町 銀河の森天文台 file: ISO-800(フジフィルム), lens: 24mm, f2.8 開放, 露出1分)1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。22:50ー24:00(0:00)頃に 北の方向で波長630nmの光の明るさが増している。最大の明るさは 447R(23:30JST)である。2. All-Sky Images in False-Color 波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。光の強さを疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 北の地平線近く(画面の上の端)に13:57:33UT(22:57:33JST)の画像から、 オーロラに伴う増光が見える。北西方向に見える光は陸別の街明かり。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。 この時刻以前にも北側の画面の端が明るい。これも磁気嵐に伴う オーロラの最低緯度側を見ている可能性があるが、確定的なことは言えない。3. Animation of All-Sky Images in Realistic Color (1.5MB) 波長630nmの発光を全天カメラでとらえた動画像。光の強さを赤い色の強さで表す。 魚眼レンズの像で、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 北の地平線近く(画面の上の端)に13:57:33UT(22:57:33JST)の画像から、 オーロラに伴う増光が見える。北西方向に見える光は陸別の街明かり。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。 観測開始時に強い光が入ったのは人工光と思われる。観測終了時に 東側が明るくなるのは、夜明けの薄明光4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer 11月29−30日に陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、 北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 磁気嵐にともなって磁場が大きく変動している。630nmの増光が 観測された13:50UT(22:50JST)には、H成分が 200nT近く増大し、非常に大きなpositive bayがおきていることがわかる。 このpositive H bayはサブストームに伴って磁気圏・電離圏を流れる電流 によって起こされることが知られている。同時に観測された Pi2地磁気脈動のデータからも、このサブストームの開始時刻は 13:50UTであることがわかっている。Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台 花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別総合観測室)
塩川のページに戻る
Division II Homepage
銀河の森天文台のホームページへ