北海道・信楽で観測された低緯度オーロラ (2001年3月31日)


2001年3月31日午後8時11分、陸別町・銀河の森天文台より北の空を 撮影。赤い光がオーロラの光。白い筋状の光は雲の光である。 (提供:北海道陸別町銀河の森天文台  film:Fuji S-800, lens:24mm, F2.8, 露出50秒) 銀河の森天文台のホームページへ


 平成13年3月31日午後19時00分から翌4月1日午前04時00分
(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の
母子里観測所および陸別総合観測室で、強い磁気嵐に伴って現れた赤い低緯度
オーロラを観測した。このオーロラはこの日の朝9時過ぎから始まった
非常に大きな磁気嵐の主相から回復相にかけて発生している。このオーロラの最大の
明るさは、母子里観測所において、観測終了直前に観測された約6kR
(キロレイリー、明るさの単位、観測波長は酸素原子の発光輝線である
630nm)であった。この明るさは、2000年4月7日に陸別で観測
された4.2kRを超え、今回の太陽極大期で、北海道で観測されたオーロラ
としては最大の明るさである。目の良い人が注意してみていれば、
明け方に北の空がぼんやり赤くなっていたことが見えたかもしれない。
波長630nmの酸素原子の赤い光のみが発光し、同じ酸素原子の
557.7nmがほとんど増光していないことは、これまで北海道で
観測されたオーロラと共通している。

 さらに、同日、滋賀県信楽町にある京都大学宙空電波科学研究センターの
信楽MU観測所においても、名古屋大学太陽地球環境研究所の全天カメラに
よって、このオーロラがとらえられている。この時の信楽は快晴で、
観測を開始した4月1日午前0時30分から観測を終了した午前4時30分まで、
北の空に波長630nmの赤いオーロラが見えていた。最大の明るさは
2.1kRで、肉眼では見えていない。この観測は、これまで日本で
科学機器を用いて観測されたオーロラの、もっとも南の記録である。


 母子里観測所における観測は、固定型フォトメータ、磁力計で行われた。
また、陸別総合観測室では、固定型フォトメータ、掃天フォトメータ、
全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、を用いて観測が行われた。
信楽観測点では全天カメラ、ファブリ・ペロー分光計、掃天フォトメータ、
分光温度計で観測が行われている。
以下にその図を示す。夜半頃まで空に月があったため、掃天フォトメータ、
全天カメラの観測は夜半過ぎから行われている。一方、北の空のみを見ている
固定型フォトメータは、一晩中観測を行っており、オーロラの時間変化を
追うことに成功している。母子里、陸別の空は曇りで、各機器は雲を
通してオーロラの明るさの変化を見ている。上にあるように、
北海道陸別町銀河の森天文台では写真撮影にも成功した。

母子里観測所:北海道雨龍郡幌加内町字母子里北西3 (44.4N 142.3E) 
       
陸別総合観測室:北海道足寄郡陸別町字遠別 (43.5N, 143.8E)

信楽MU観測所:滋賀県甲賀郡信楽町神山(34.8N, 136.1E)


1. Photometer and Magnetic Field Plot at Moshiri                    
3月31日ー4月1日に母子里で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
磁気嵐にともなって磁場が大きく変動している。630nmの赤い光は、
観測開始の10:00UT(19:00JST)からすでに約3kRと
通常時よりはるかに高く、この時点ですでにオーロラが出ていることが
わかる。その後、いったん暗くなるが、夜中過ぎの16:00UT
(4月1日01:00JST)頃から急に明るくなり、観測終了時の
19:00UT(04:00JST)には、6kRにまで達し、
今回の太陽活動極大期でもっとも明るいレベルまで達している。
データに1時間ごとに入っている縦の線は、機器の校正のための
ランプの光である。

下の図に示した磁場変動は、磁気嵐の主相から回復相にかけて、このオーロラ
が出現していることを示している。ただし、機器の関係で04:00UT
以前のデータが無いことと、06:00UT及び07:00UTに
データの飛びがあるので、次の、陸別の磁場データを参照されたい。

2. Photometer and Magnetic Field Plot at Rikubetsu  
3月31日ー4月1日に陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
630nmの赤い光は、母子里と同様に、観測開始の10:00UT
(19:00JST)からすでに約3kRになっている。その後、
11:00−1200UT(20:00−21:00JST)には
4kR近くまで増光する。観測終了時に若干の増光が見られるが、
1.4kR程度である。母子里観測所と若干違うのは、見ている位置
が違うこと、陸別が曇りであったこと、などのためと思われる。
データに1時間ごとに入っている縦の線は、機器の校正のための
ランプの光である。

下の図に示した磁場変動は、磁気嵐の主相から回復相にかけて、このオーロラ
が出現していることを示している。磁気嵐の主相におけるH成分
(北向き成分)の現象は500nT以上あり、この磁気嵐が非常に
大きなものであったことがわかる。

3. Scanning Photometer Plot at Rikubetsu 
陸別の掃天フォトメータのデータ。観測開始(00:40JST)から
徐々に北の方向で波長630nmの光の明るさが増している。
北の地平線近く(scan=-74.88度)より、一つ上のデータ(scan=-37.44度)が
明るいのは、雲による遮蔽の効果と思われる。

4. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 
陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
北の方角(画面の上)にオーロラに伴う増光が見え、明け方に向けてだんだん
明るくなる。雲を通して観測しているので、全体がぼやけている。
露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。

5. Animation of All-Sky Images in Realistic Color at Rikubetsu
波長630nmの発光を全天カメラでとらえた動画像。光の強さを赤い色の強さで表す。
魚眼レンズの像で、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
北の方角(画面の上)にオーロラに伴う増光が見え、明け方に向けてだんだん
明るくなるのがわかる。雲を通して観測しているので、全体がぼやけており、
光の動きはほとんど雲の動きを見ていると思われる。
露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。

6. All-Sky Images in False-Color at Shigaraki 
信楽で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
北の方角(画面の上の端)にオーロラに伴う増光が見え、明け方に向けてだんだん
明るくなる。17−18UT頃に画面全体が明るくなるのは、伝搬性電離圏擾乱
(Traveling Ionospheric Distrubances, TID)と呼ばれる現象によるもの
と考えられ、オーロラに伴って発生した電離層の乱れが南に向かって
伝搬していることを示していて、非常に興味深い。
露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。

7. Animation of All-Sky Images in Realistic Color at Shigaraki
信楽で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた動画像。
光の強さを赤い色の強さで表す。
魚眼レンズの像で、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
北の方角(画面の上の端)にオーロラに伴う増光が見え、明け方に向けてだんだん
明るくなるのがわかる。
露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。






Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台
            瀬良正幸様、池神優司様、池神ヨシ子様(母子里観測所)
             花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別総合観測室)
          京都大学宙空電波科学研究センター

北海道で観測されたオーロラ(2000年4月以降)

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