平成13年4月29日午前1時頃から3時頃(日本時間)にかけて、 北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別総合観測室で、 磁気嵐中に弱い低緯度オーロラを観測した。 このオーロラは前日(4月28日)の午後2時(日本時間)から始まった 磁気嵐の主相において発生している。このオーロラの最大の明るさは 観測終了時の午前3時で約600R(レイリー、明るさの単位、 観測波長は酸素原子の発光輝線である630nm)であった。この晩の陸別では 時々雲が出てきたり、もやのせいで街明かりが強かったりして、オーロラとの 区別が難しい状況であったが、同時刻に得られた赤外域のOH大気光は増光せず、 630nmのオーロラの波長のみ、増光していることから、オーロラと 判断している(1.の掃天フォトメータのデータ、2,3の全天カメラの データを参照)。 観測は掃天フォトメータ、全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、 固定型フォトメータを用いて行われた。以下にその図を示す。 今回のオーロラは肉眼では見えない明るさである (肉眼で見える波長630nmの赤い光の明るさは個人差はあるが10kR程度)
1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。真夜中前から明け方に向けて観測している。 観測波長はオーロラの630nmの光(酸素原子)と、大気光のOH分子の 光(843.0nm,839.9nm)で、グラフの下の方が北、上の方が 南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の 強さが、真夜中から明け方3時に向けて、特に北から天頂にかけて、 だんだん明るくなるのがわかる。2. All-Sky Images (630nm) in False-Color 波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。光の強さを疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 観測開始からずっと北西方向(図の右上)に見える光は陸別の街明かり。 17時UT以降、北東が明るくなってゆくのは薄明光(太陽の反射光)に よるものである。オーロラはこの図では、これらの光に混ざって、 北から天頂にかけて、16時UT(日本時間午前1時)以降にだんだん 明るくなる。16時台に北東方向に見える2本の帯状の構造は、オーロラの 構造ではなく、この時間帯に見られる雲の構造と思われる。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。3. All-Sky Images (OH-bands, deviation from average image) この観測時の雲の状況を示すために、同じカメラでとられた赤外域の OHの大気光画像を示す。それぞれの時間の前後5枚の平均画像からの 差のみを示した。雲は赤外域の撮像でよく写ることが経験的にわかっている。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 14−15時UTと16時UTは全天快晴で、大気重力波による大気光の 縞模様がよく見える。15:30−15:44UTと17時UT以降は 若干雲が出ていることがわかる。 露出は15秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。 OH大気光は、高さ85km付近に存在するOH分子からでる 近赤外域の発光である。4. Animation of All-Sky Images in Realistic Color (1.5MB) 波長630nmの発光を全天カメラでとらえた動画像。光の強さを赤い色の強さで表す。 魚眼レンズの像で、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 観測開始からずっと北西方向(図の右上)に見える光は陸別の街明かり。 17時UT以降、北東が明るくなってゆくのは薄明光(太陽の反射光)に よるものである。オーロラはこの図では、これらの光に混ざって、 北から天頂にかけて、16時UT(日本時間午前1時)以降にだんだん 明るくなる。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。5. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer 4月28−29日に陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、 北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 05時UT(日本時間の14時)から磁気嵐が始まり、 磁場が変動しているが、磁気嵐の強さとしてはそんなに 強くない(H成分の減少が大きくない)。この固定型フォトメータの データでは、1kR以下のオーロラを確認するのは難しい。Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台 花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別総合観測室)
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