北海道で観測された低緯度オーロラ (2003年5月30日)




平成15年5月30日午前1−2時頃(日本時間)にかけて、
北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別総合観測室で、
発達中の磁気嵐において低緯度オーロラを観測した。
このオーロラは前日の午後9時頃(日本時間)から始まった
磁気嵐の開始期において発生している。このオーロラの最大の明るさは
約700R(レイリー、明るさの単位、観測波長は酸素原子
の発光輝線である630nm)であった。
肉眼ではおそらく見えない程度の明るさであろう。全天カメラの画像では、
明け方の薄明光(北東)や陸別の街明かり(北西)と区別が付きにくいが、
フォトメータで計測した発光強度が、通常時に
比べて大きく増光しているので、オーロラであると思われる。

 観測は掃天フォトメータ、全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、
固定型フォトメータを用いて行われた。以下にその図を示す。


1. Photometer Plot                    
掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光(酸素原子)
で、グラフの下の方が北、上の方が
南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の
強さが、午前1時頃から3時に向けて、北の方角で、急激に
明るくなるのがわかる。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 
陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
16時UT頃(日本時間で1時頃)から北の空が明るくなり、
オーロラに伴う増光が見える。露出は2分45秒。
画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。画面の右上(北西)の
方向に見えるのは、陸別の街明かり。また、17時前頃に北東の
空が明るくなるのは、オーロラによるものと明け方の薄明光(太陽光)に
よるものが混ざっていると思われる。

3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu  
陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向
地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
12時頃UT(日本時間の21時頃)から磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が大きく変動している。
フォトメータのデータには、630nmの
光が16時UT以降、徐々に強くなっているが、このフォトメータは
感度があまり高くないために、はっきりしない。

5. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 
同じ日に陸別から約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の
母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
12時頃UT(日本時間の21時頃)から磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が大きく変動している。
母子里のフォトメータでは、オーロラは見えていない。

6. Photometer Plot - 2  
陸別の掃天フォトメータ(No.3)のデータ。このフォトメータの
観測波長はオーロラの486.1nm(水素原子)と427.8nm
(窒素分子イオン)を非常に高感度で計測している。
下から2番目のグラフで、427.8nmの光が、北の空(点線)の
もののみ、01−02時(日本時間)に増光していることが
わかる。この波長の発光は、高エネルギー電子の大気への降り込みを
示唆していて非常に興味ぶかい。

Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台
            花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別総合観測室)

過去に観測された低緯度オーロラ一覧
塩川のページに戻る
Division II Homepage
銀河の森天文台のホームページへ