平成15年10月25日午前0時40分ー2時頃(日本時間)にかけて、 北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別観測所で、 磁気嵐の開始に伴う急激な磁場の増大に伴って、波長630nmの光の ごく弱い増光を観測した。この増光は、午前0時25分に同観測所 で観測された磁場の急激な増大(北向き成分で約80nT)の 直後に、北の空、地平線近くに発生しており、最大の明るさは 約170R(レイリー、明るさの単位、観測波長は酸素原子 の発光輝線である630nm)であった。この明るさは、通常の 大気光レベル(数十ー200R)と同じ程度であるが、磁場の 変動と同期して、北の空だけ増光していることから、きわめて弱い オーロラ光をとらえた可能性がある。 同地の陸別町銀河の森天文台では、このごく弱い増光を写真で とらえることに成功している。 銀河の森天文台のホームページへ
観測は掃天フォトメータ、全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、 固定型フォトメータを用いて行われた。以下にその図を示す。
1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光(酸素原子) で、グラフの下の方が北、上の方が 南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の 強さが、午前0時40頃から2時にかけて、北の方角で、急激に 明るくなるのがわかる。18−20時頃の増光は、日没後でも昼間の 日照により電離層の電子密度が高いことによる大気光の発光であり、 日没後、中性大気との衝突で電子密度が下がるにつれて、明るさも 減光している。2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 15時54分UT(日本時間で00時54分)の画像で、北の空の地平線 近くが明るくなっているのがわかる。16時48分に写っているのは 雲による反射光。露出は2分45秒。 画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。画面の右上(北西)の 方向に見えるのは、陸別の街明かり。また、10時以前に画面全体が明るく なっているのは、日没後の薄明光(太陽光)によるものである。3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu 陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向 地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 12時頃UT頃(日本時間の21時頃)から磁気嵐が始まり、 15時24分にH成分(北向き成分)が大きく(約80nT) 増大している。これは、惑星間空間を伝わる太陽風のショックが 地球付近を通過し、地球の磁気圏を急激に圧縮したことを 表している。これに伴い、磁気圏サブストームが起きている可能性もある。 フォトメータのデータには、630nmの増光は見えていないが、 これはこのフォトメータの感度が高くないためである。
Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台 花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所)
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