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平成15年10月29日午後7時30分から翌日30日午前5時頃 (日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所 の陸別観測所、母子里観測所において、赤い低緯度オーロラを観測した。 このオーロラは29日の午後3時11分(日本時間)から始まった 磁気嵐中に発生している。このオーロラの最大の明るさは、 陸別観測所で約2.2kR(キロレイリー、明るさの単位、 北の地平線から15度の位置、観測波長は酸素原子の発光輝線である 630nm)、母子里観測所で約0.9kRであった。 翌10月30−31日も陸別・母子里ではオーロラが観測された。観測開始 から夜間ずっと0.5kR程度の明るさで推移している。 これは前日から続いている磁気嵐の回復相に現れたSARアークと 思われる。明け方直前、16:30UT(日本時間01:30頃)に 惑星間衝撃波の到達に伴って新たな磁気嵐が発生し、それに伴ってこのSARアーク が南(低緯度側)に広がって来るのが観測され、明るさも観測終了時 で2.4kRに達した。母子里のフォトメータでは 最大3kRまで達している。このオーロラの 低緯度側への広がりに伴い、信楽でも18:33UT(日本時間 31日午前3時33分)に北の地平線近くにわずかにオーロラ発光 がとらえられている。またその直前、17:57UTの信楽の 画像には、磁気嵐の開始時に伴う電離層の擾乱による、と見られる 南側からの増光が観測されている。 信楽は滋賀県信楽町の京都大学宙空電波科学研究センター 信楽MU観測所において観測を行っている。 さらに翌10月31日ー11月1日の晩も母子里・陸別ではオーロラが 観測された。観測開始時が一番明るく、母子里で約4kR(固定型 フォトメータのデータ)に達していたが、明け方に向けて徐々に明るさを減じている。 これは31日の午前1時30分頃に発生した磁気嵐の回復相に おけるSARアークと思われる。 名古屋大学太陽地球環境研究所の観測は掃天フォトメータ(陸別)、 全天カメラ(魚眼レンズ付き、陸別、信楽)、磁力計(陸別、母子里)、 固定型フォトメータ(陸別、母子里)を用いて行われた。以下にその図を示す。
オーロラと低緯度オーロラのかんたんな解説****** 10月29−30日 ***********1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光 (酸素原子)で、グラフの下の方が北、上の方が 南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の 強さが、20時付近、0時付近、明け方5時付近と3回、北の方角で、 明るくなるのがわかる。5時付近、観測終了直前には、2.2kRに 達している。この日は陸別が曇りがちだったので、 こまかい変動は雲によってオーロラ光が遮られることによると思われる。2. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu 陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向 地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 6時11分UT(日本時間の午後3時11分)から磁気嵐が始まっている。 上段のフォトメータのデータは、雲による擾乱が見られるが、 明け方近くにはやはり2kRまで明るくなっている。3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 同じ日に陸別から北東に約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の 母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、 北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 陸別と同様に6時11分UT(日本時間の午後3時11分)から磁気嵐が 始まっているのがわかる。09−12時UT(日本時間18−21時)に、 波長630nmの赤い光の低緯度オーロラが現れている。 最大約0.9kRまで増光している。同様に557.7nm(緑の光)も 同じくらいの明るさになっていることが興味深い。 北の方角を見ているカメラのデータから、12時UT過ぎまでは 北の方角に星が見えており、それ以降、曇ってくることがわかっている。 磁場データで、6時UT過ぎのD成分と23時過ぎのH成分に大きなジャンプが 起きているのは機器の原因によるもので、自然現象ではない。4. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 陸別で、14時52分UT(日本時間23時52分)に 波長630nmの酸素原子の発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを疑似カラー表示で表す(波長630nmの光は肉眼では赤く見える)。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 露出は2分45秒。北の地平線近くに、オーロラに伴う発光が見られる。****** 10月30−31日 ***********1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光 (酸素原子)で、グラフの下の方が北、上の方が 南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の 強さが、北の方角で夜間を通じて0.5kR程度である。明け方、 観測終了直前には、2.4kR付近まで明るくなった。2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 夜間を通じて、北の方角に低緯度オーロラに伴う発光が広がっている。 17:53UT(日本時間午前02:53)から18:34UTにかけて、 オーロラが低緯度側に広がってきているのがわかる。この直前、 16:30UT頃には地磁気データから、新たな磁気嵐が、惑星間空間衝撃波の 到達に伴って、発生したことがわかっている。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。 10時UT台に画面全体が明るく なっているのは、日没後の薄明光(太陽光)によるものである。3. All-Sky Images in False-Color at Shigaraki 滋賀県信楽町の京都大学宙空電波科学研究センターで、 波長630nmの酸素原子の発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを疑似カラー表示で表す(波長630nmの光は肉眼では赤く見える)。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 観測開始後の数枚の画像が明るいのは、日没後の薄明光と電離層の影響。 17:57UT(日本時間02:57)には南側が増光しており、 新たな磁気嵐開始時における電離層の擾乱と思われる。オーロラ光は18:33UT (日本時間午前03時33分)の画像の北の端に見られるわずかな 明かり(疑似カラーでは緑色)で、陸別でオーロラが南に広がるに つれて、信楽でも北の地平線近くに観測されたものと思われる。 最後の2枚の画像(19:08UTと19:52UT)に見られる 光は雲による反射光と薄明光がまざったものである。 露出は2分45秒。画像中の白い点は星。4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu 陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向 地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 前日からおきていた磁気嵐はゆっくり回復し、H成分が だんだん正にふれてくる。16:30UT頃(日本時間01:30頃)に 新たな惑星間衝撃波が地球に到達し、H成分が若干増えたあと、 24UTに向けて大きく減少し、新たな磁気嵐が始まっているのが わかる。上段のフォトメータのデータで、630nmの強度は 低いレベルで推移するが、明け方近くに最大2kR程度まで 上昇している。5. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 同じ日に陸別から北東に約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の 母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、 北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 陸別と同様に磁気嵐の回復と新たな磁気嵐の開始が観測されている。 波長630nmの赤い光の低緯度オーロラが観測終了直前には 約3kR以上まで増光しているのがわかる。 磁場データで、17UT頃のH成分に大きなジャンプが 起きているのは機器の原因によるもので、自然現象ではない。****** 10月31−11月1日 ***********1. Photometer Plot 掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光 (酸素原子)で、グラフの下の方が北、上の方が 南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の 強さが、北の方角で観測開始時(日本時間31日午後9時) に0.7kR程度で、オーロラと 判断できる。このオーロラは明け方にむけて徐々に明るさを 弱めながら、ずっと観測されている。2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。 夜間を通じて、北の地平線近くに低緯度オーロラに伴う発光が、 徐々によわくなりながら広がっている。 15:38−1727UT付近の画像が全体的に明るくなって いるのは、磁気嵐にともなう何らかの電離層の擾乱によるものと思われる。 露出は2分45秒。画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ 標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu 陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向 地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 前日からおきていた磁気嵐はゆっくり回復し、H成分が だんだん正にふれている。 上から3番目のパネル、630nmの明るさが、観測開始時 (08:30UT,日本時間で17時30分)に 約2kRで、それから徐々に暗くなっている。 磁気嵐の回復相に現れたSARアークと思われる。4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 同じ日に陸別から北東に約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の 母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向 地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。 前日からおきていた磁気嵐はゆっくり回復し、H成分が だんだん正にふれている。05:30UT頃に見られるH成分の 大きなジャンプは機器の原因によるもので自然現象ではない。 上から3番目のパネル、630nmの明るさが、観測開始時 (08:30UT,日本時間で17時30分)に 約4kRまで増光しており、それから徐々に暗くなっている。 磁気嵐の回復相に現れたSARアークと思われる。Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台 京都大学宙空電波科学研究センター信楽MU観測所 花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所) 瀬良正幸様、池神優司様(名古屋大学太陽地球環境研究所・母子里観測所)
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