北海道で観測された低緯度オーロラ (2003年11月21ー22日)


平成15年11月21日午前3時ー5時30分(日本時間)と 21日午後23時から翌22日午前3時40分(日本時間)に かけて、北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の母子里 観測所、陸別観測所において、低緯度オーロラを観測した。 このオーロラは20日の午後5時03分(日本時間)から始まった 磁気嵐の主相と回復相に発生している。北海道は全般的に天気が 悪かったが、21日の明け方は母子里で、21日の晩から22日は 陸別でオーロラに伴う赤い光の増光を確認した。また、陸別では このとき、557.7nmが全天で630nmと同じくらい明るく なっており、超高層大気に何らかの別の発光機構があることを 示唆している。このオーロラの最大の明るさは、母子里観測所で 約1.4kR(キロレイリー、明るさの単位、北の地平線から 20度の位置、観測波長は酸素原子の発光輝線630nm)であった。  名古屋大学太陽地球環境研究所の観測は掃天フォトメータ(陸別)、 全天カメラ(魚眼レンズ付き、陸別、信楽)、磁力計(陸別、母子里)、 固定型フォトメータ(陸別、母子里)を用いて行われている。 以下にその図を示す。

オーロラと低緯度オーロラのかんたんな解説


1. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri  
母子里で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向
地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。11月20日の
8時03分UT(日本時間の午後5時03分)から磁気嵐が始まり、
20日後半は主相、21日は回復相を表している。
上段のフォトメータのデータは、雲による擾乱が見られるが、
20日の18−20UT(日本時間21日03−05時)には
約1.4kRまで明るくなっている。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (630nm) 
陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。時刻はUT(日本時間ー9時間)。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
観測はもっと以前から行っているが、ずっと曇っていたので後半の
データのみ示す。13:02UTの画像は全天が曇っている。
その後、13:48UT(日本時間21日22時48分)以降の
画像はすべて晴れ、星が白い点として見えている。この晴れの
時間を通じて、北の方角に低緯度オーロラに伴う発光が広がって
おり、明け方に向かってだんだん暗くなっていく。
磁気嵐の回復相におけるSARアークと思われる。
露出は2分45秒。

3. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (557.7nm) 
陸別で、波長557.7nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。時刻はUT(日本時間ー9時間)。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
630nmの画像と同じ時間帯を示している。 疑似カラーのコンターレベル
も630nmと合わせてあるが、630nmより明るい発光が、北だけでなく全天を
通して見られる。磁気嵐に伴って大気光が増光していると考えられるが
その原因は不明。露出は1分45秒。

4. Photometer Plot 
陸別の掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光
(酸素原子)で、グラフの下の方が北、上の方が
南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。観測前半の時間帯、
630nmが北の方角で明るくなっているが、曇っているので
定量的な評価は難しい。陸別が晴れた23時以降、北の方角は300R
くらいの発光が徐々に暗くなりながら見られている。


Special thanks to: りくべつ宇宙地球科学館
          花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所)
          瀬良正幸様、池神優司様(名古屋大学太陽地球環境研究所・母子里観測所)


塩川のページに戻る
Division II Homepage
りくべつ宇宙地球科学館のホームページへ