北海道で観測された低緯度オーロラ (2015年12月21日)


2015年12月21日4時-5時半(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学 宇宙地球環境研究所の陸別観測所において、弱い低緯度オーロラを 観測した。 このオーロラは20日の1時過ぎ(日本時間)から始まった 磁気嵐の主相に 発生している。このオーロラの最大の明るさは、 最大で約0.25kR(キロ レイリー、明るさの単位、北の地平線から 15度の位置、観測波長は酸素 原子の発光輝線630nm)であった。 人間の目に見える明るさは数キロ レイリー以上なので、肉眼では見えなかった と思われる。 名古屋大学宇宙 地球環境研究所の観測は掃天フォトメータ(陸別)、 磁力計(陸別、 母子里)、高感度全天カメラ(陸別)、分光温度フォトメータ (陸別)、 固定型フォトメータ(母子里、陸別)などを用いて行われている。  このオーロラは12月20日に発生した大きな磁気嵐に伴って発生している。 磁気嵐では地球のまわりに太陽からの高エネルギー粒子がやってきて、 人工衛星の故障や宇宙飛行士の被曝を起こしたり衛星と地上の間の通信の 障害になったりする。低緯度オーロラの出現は、このような高エネルギー 粒子がより地球の近くまでやってきていることを示している。


1. Photometer Plot at Rikubetsu 
陸別の掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光
(酸素原子)と夜間大気光の839.9-843.0nmの光で、グラフの下の方が北、
上の方が南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。明け方4時過ぎ
から観測終了(05時半)の時間帯に、波長630nmの赤い光が北の方角
(天頂角-74.88°)で明るくなっている(赤い矢印で示した)。最大の
明るさは朝04時33分頃で0.257kRであった。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (630nm) 
陸別で、波長630nmの赤い光の発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを人工的な色をつけて疑似カラー表示で表している。時刻
はUT(日本時間ー9時間)で、16時33分35秒UT(日本時間01時33分35秒)
から20時08分05秒UT(日本時間05時08分05秒)までの12枚の画像。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の
中心が天頂。露出は40秒。空はやや曇りがちであるが、19時UT以降
(日本時間04時以降)、北から北北西の空にかけて、オーロラが地平線
近くに現れている。

3. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (557.7nm) 
陸別で、波長557.7nmの緑の光の発光を全天カメラでとらえた画像。
波長630nmの画像と図の書式は同じで、同じカメラで波長を切り替えて
撮影している。露出は30秒。雲や西北西の街明りは630nmの画像と同じ
ように写っているが、北の空のオーロラはこの画像には写っていない。
このことから、波長630nmの画像の北の光は雲や街明かりではなくオーロラで
あることがわかる。

4. Magnetic Field at Rikubetsu 
陸別で観測された地磁気変化(時刻はUT、UT=日本時間ー9時間)。
下からH(北向き)、D(東向き)、Z(下向き)の3成分の地磁気変動。
12月20日の00時UT(日本時間で9時)からH成分(北向き成分)が
どんどん減少して磁気嵐が発達していることがわかる。低緯度オーロラは
19:00-20:30UT(日本時間で12月21日の04時から05時半)に観測されたが、
その直前からH成分が急に増大し始め、1時間くらいでもとに戻っており、
この時間帯に磁気圏サブストームが発生していたがわかる。
上の3枚のパネルは北の方角を向いている分光フォトメータで計測された
それぞれの波長の発光輝度である。今回のオーロラ光に伴うと思われる
増光が、波長630nmの19時UT以降にかすかに見える。


Special thanks to: りくべつ宇宙地球科学館(銀河の森天文台)
   横関信之様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所)
   瀬良正幸様、池神優司様(名古屋大学太陽地球環境研究所・母子里観測所)
   加藤泰男様、濱口佳之様、山本優佳様、足立匠様(名古屋大学太陽地球環境研究所・技術職員)


オーロラと低緯度オーロラのかんたんな解説
 

塩川のページに戻る
りくべつ宇宙地球科学館(銀河の森天文台)のホームページへ