
大学院を受験する学生のために

塩川が担当して進めている研究は以下のように
なっています。地球大気と宇宙空間のあいだ、宇宙ステーションが飛び、
オーロラが光っている領域を、高感度カメラや分光フォトメータなどを用いて、
観測的な手法で研究を進めます。国際的なフィールド観測やオーロラ、
大気光、地磁気変動などに興味のある方はぜひ一度、
見学に来て下さい。やる気のある学生を求めています。
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研究領域の概念図
1.高感度の光観測技術を用いた超高層大気のダイナミクス
超高層大気とは、高さ80−400km付近の大気の事を指します。この高さ
は地球の大気と宇宙空間との境界領域にあたり、一部の大気が電離したプラズマ
状態になっています(電離圏)。プラズマと大気との相互作用により、北極・南
極ではオーロラが、中低緯度では夜間大気光と呼ばれる発光がこの高さで起きて
います。私たちは、このオーロラや夜間大気光を高分解能で計測する事ができる
超高層大気イメージングシステムを開発し、この機器を用いた研究を行っていま
す。
1−1.電離圏TID現象の観測
北海道から沖縄まで含めて行われた日本国
内での多点キャンペーン観測により、高さ200−300kmの電離圏において
水平スケール200−400kmの巨大な波が日本列島を斜めに横切っていく現
象が、最新の高感度冷却CCDカメラによる大気光像にとらえられました。この
現象はTID(Traveling Ionospheric Disturbances)と呼ばれ、電離圏内の電子密度の揺
らぎに関係していると思われますが、いくつかの生成モデルが提唱されていて、
その原因はよく分かっていません。TIDのこのような大スケールの観測は世界
でも初めてであり、今後は他の分光器やレーダーを使って得られた情報をあわせ
て、その成因を探ってゆきます。
1−2.中間圏重力波のイメージング観測
高さ80−100kmの中間圏界面付近では、酸素原子(波長557.7nm)
やOH分子(波長:赤外域)が夜間大気光の光を出しています。この付近での大
気の変動に大きな役割を担っている大気重力波(大気の波動)が、高感度CCD
カメラシステムで大気光の縞模様としてとらえられる、ということが、ここ10
年間に世界の研究者によって分かってきました。私たちはさらに複数の高感度カ
メラを使うことにより、いくつかの高さでの発光・重力波を同時にとらえる事に
成功し、このデータと分光器、大気レーダーのデータを合わせて、大気重力波の
伝わり方、破砕の過程を調べています。
2.オーロラに関連した宇宙空間プラズマ環境
私たちは平成4年以降、高緯度域(カナダ北極圏)及び低緯度域(北海道)で
主に高感度カメラや分光器を用いてオーロラの観測的研究を行ってきました。こ
の研究結果から、以下のような問題意識で研究を進めています。
2−1.磁気圏サブストームのダイナミクス
オーロラは通常、静かなところから急に明るくなり、極域全体に広がってまた
静かに戻っていく、という1−2時間の変動をしますが、これをオーロラサブス
トームと読んでいます。オーロラサブストームを引き起こすのは、地球周りのプ
ラズマが存在する磁気圏における磁気圏サブストームと考えられますが、何が引
き金となって急にオーロラが明るくなるのかはまだよく分かっていません。地球
磁気圏の中での高速のイオンの流れが関係していると思われますが、その物理過
程について、磁気圏の中を飛翔している人工衛星やカナダ、シベリアのオーロラ
観測データを用いて系統的に調べます。
2−2.高緯度オーロラの成因
オーロラは通常、緯度60−75度付近(オーロラ帯)によく現れます。この
オーロラ帯よりも高緯度に、地磁気が静かな時に発生するカーテン構造をもった
オーロラは、地球の磁気圏と太陽風のプラズマが相互作用する境界領域の物理過
程によって生成されていると考えられています。この境界領域での人工衛星によ
る磁場、プラズマデータや北極域で観測される高感度カメラデータを解析する事
により、このオーロラの生成機構を調べます。
2−3.磁気嵐の時に見られる低緯度オーロラの成因
北海道など、オーロラ帯よりも低緯度で見られる赤い低緯度オーロラは、磁気
嵐に伴って現れます。ここ数年は11年周期の太陽活動度が再び上がってきてお
り、上記の光学観測機器によって、北海道で低緯度オーロラの観測に成功して
います。このオーロラは、boradband electronsと名付けられた特異な電子の
電離圏への降り込みがその生成原因の1つであることがこれまでの研究から
わかってきています。この特異な電子降り込みの生成機構を探るため、
磁気嵐における内部磁気圏の物理過程が通常の場合とどのように違っているか
を、人工衛星のデータを用いて系統的に調べます。
塩川のページ
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