北海道で観測された低緯度オーロラ (2015年3月18日)


北海道足寄郡陸別町の北海道陸別HFレーダーサイトにおいて、 2015年3月18日1:10:00JST から北の空を25秒露出。空がぼんやり赤く 光っているのが低緯度オーロラ。その下に緑から白っぽく見える構造は、 街明かりに照らされた雲と思われる。 提供:名古屋大学太陽地球環境研究所・西谷望准教授

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2015年3月18日1-4時(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学 太陽地球環境研究所の陸別観測所において、弱い低緯度オーロラを 観測した。このオーロラは17日の14時頃(日本時間)から始まった 磁気嵐の主相に発生している。このオーロラの最大の明るさは、 最大で約0.5kR(キロレイリー、明るさの単位、北の地平線から 15度の位置、観測波長は酸素原子の発光輝線630nm)であった。 人間の目に見える明るさは数キロレイリー以上なので、肉眼では見えなかった と思われる。 名古屋大学太陽地球環境研究所の観測は掃天フォトメータ(陸別)、 磁力計(陸別、母子里)、高感度全天カメラ(陸別)、分光温度フォトメータ (陸別)、固定型フォトメータ(母子里、陸別)などを用いて行われている。 以下にデータを示す。


1. Photometer Plot at Rikubetsu 
陸別の掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光
(酸素原子)で、グラフの下の方が北、上の方が南の光の強さを表す
(天頂角は図の左に示した)。真夜中過ぎ01時から観測終了(04時)の
時間帯に、波長630nmの赤い光が北の方角(天頂角-74.88°)で
明るくなっている(赤い矢印で示した)。最大の明るさは朝02時頃で0.5kRであった。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (630nm) 
陸別で、波長630nmの赤い光の発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを人工的な色をつけて疑似カラー表示で表している。時刻はUT
(日本時間ー9時間)で、14時03分35秒UT(日本時間23:03:35)から
18時27分35秒UT(日本時間03:27:35)までの12枚の画像。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の
中心が天頂。露出は40秒。時刻が16時UT前(日本時間午前01時前)くらい
までは空がかなり曇っているが、それ以降、、北から北西の空にかけて、
オーロラが地平線近くに現れている。

3. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu (557.7nm) 
陸別で、波長557.7nmの緑の光の発光を全天カメラでとらえた画像。
波長630nmの画像と図の書式は同じで、同じカメラで波長を切り替えて
撮影している。露出は30秒。雲や西北西の街明りは630nmの画像と同じ
ように写っているが、北の空のオーロラはこの画像には写っていない。
このことから、波長630nmの画像の北の光は雲や街明かりではなくオーロラで
あることがわかる。

4. Magnetic Field at Rikubetsu 
陸別で観測された地磁気変化(時刻はUT、UT=日本時間ー9時間)。
下からH(北向き)、D(東向き)、Z(下向き)の3成分の地磁気変動。
3月17日の05時UT(日本時間で14時)にH成分(北向き成分)が急激に
増大して磁気嵐が開始した。その後、H成分が減っていき、磁気嵐が
発達していることがわかる。低緯度オーロラは16-19UT(日本時間で
3月18日の01-04時)に観測されたが、これはH成分が最も減少した
磁気嵐の主相に起きていることがわかる。

5. Airglow Temperature Photometer data at Rikubetsu 
陸別の分光温度フォトメータで観測された天頂付近の波長427.8nmと
波長486.1nmの青い光の強度。ごくわずか(10R程度)であるが、
赤い光(630nm)の低緯度オーロラが観測されている時間帯に、
波長427.8nmの発光が起きていることがわかる。地球磁気圏からの
高エネルギー粒子の降り込みがわずかにあったのかもしれない。


Special thanks to: りくべつ宇宙地球科学館(銀河の森天文台)
   横関信之様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所)
   瀬良正幸様、池神優司様(名古屋大学太陽地球環境研究所・母子里観測所)
   加藤泰男様、濱口佳之様、山本優佳様、足立匠様(名古屋大学太陽地球環境研究所・技術職員)


オーロラと低緯度オーロラのかんたんな解説
 

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