カムチャッカで観測された低緯度オーロラ (2021年11月04日)


2021年11月04日16時半-真夜中(日本時間)にかけて、カムチャッカのパラツンカ にあるロシア科学アカデミー極東支部・宇宙物理学及び電波伝搬研究所(IKIR, FEB RAS)に国際共同研究で設置している名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE)の 全天カメラによって、赤い低緯度オーロラを 観測した。 このオーロラは4日の朝4時過ぎ(日本時間)から始まった 磁気嵐の主相から 回復相に発生している。このオーロラの最大の明るさは、 最大で約1kR(キロ レイリー、明るさの単位、観測波長は酸素原子の発光輝線630nm)であった。 人間の目に見える明るさは数キロレイリー以上なので、カムチャッカで注意深く 北の空を見ていた人は見えたかもしれない。 名古屋大学宇宙地球環境研究所の 観測は、掃天フォトメータ(陸別)、 磁力計(陸別、母子里)、 高感度全天カメラ(パラツンカ、陸別)、分光温度フォトメータ (陸別)、 固定型フォトメータ(母子里、陸別)などを用いて行われている。  このオーロラは11月04日に発生した大きな磁気嵐に伴って発生している。 磁気嵐では地球のまわりに太陽からの高エネルギー粒子がやってきて、 人工衛星の故障や宇宙飛行士の被曝を起こしたり衛星と地上の間の通信の 障害になったりする。低緯度オーロラの出現は、このような高エネルギー 粒子がより地球の近くまでやってきていることを示している。


1. All-Sky Images in False-Color at Paratunka (630nm, 558nm) 
カムチャッカ(パラツンカ観測点)で、波長630nmの赤い光の発光を全天カメラで
とらえた画像。光の強さを人工的な色をつけて疑似カラー表示で表している。
時刻はUT(日本時間ー9時間)で、08時02分19秒UT(日本時間17時02分19秒)
から14時00分20秒UT(日本時間23時00分20秒)までの5枚の画像。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の
中心が天頂。露出は630nmが40秒、558nmが30秒。08時UT以降(日本時間17時以降)、
北から波長630nmの赤いオーロラが現れて南に移動し、14UT頃に天頂付近で弱く
なっていくことが分かる。右下の画像は右上と同じ11時UT(日本時間20時)の
緑(波長558nm)の画像で、同時刻の右上の赤い光(波長630nm)に見られる
オーロラが見えないことから、このオーロラは赤い光が主に発光している
Stable Auroral Red (SAR)アークであると思われる。

2. Magnetic Field and Photometer Data at Rikubetsu 
ISEE附属の北海道陸別観測所で観測された地磁気変化(時刻はUT、
UT=日本時間ー9時間)。下からH(北向き)、D(東向き)、Z(下向き)の3成分の
地磁気変動。11月04日の00時UT(日本時間で9時)からH成分(北向き成分)が
どんどん減少して磁気嵐が発達していることがわかる。低緯度オーロラは
07:30-15:00UT(日本時間で11月04日の16時半から真夜中)に観測されたが、
09UTや11UTからH成分が急に増大し始め、それぞれ2時間くらいでもとに戻っており、
これらの時間帯に磁気圏サブストームが発生していたがわかる。
上の3枚のパネルは北の方角を向いている固定型分光フォトメータで計測された
それぞれの波長の発光輝度である。残念ながら陸別は曇っていたので、オーロラ
の発光は観測されていない。

3. Magnetic Field and Photometer Data at Moshiri 
ISEE附属の北海道母子里観測所で観測された地磁気変化(時刻はUT、
UT=日本時間ー9時間)。下からH(北向き)、D(東向き)、Z(下向き)の
3成分の地磁気変動。陸別観測所とほぼ同じ地磁気変動が観測されている。
上の3枚のパネルは北の方角を向いている固定型分光フォトメータで計測された
それぞれの波長の発光輝度である。母子里観測所はおそらく晴れていたが、
オーロラの発光は観測されていない。カムチャッカの全天カメラの画像からも
分かるように、北海道まではオーロラは到達していなかった。

4. Station Map 
パラツンカ観測点、陸別観測所、母子里観測所の位置関係。
半径500kmの円はパラツンカと陸別の全天カメラのおおよその視野を表す。


Special thanks to: りくべつ宇宙地球科学館(銀河の森天文台)
   横関信之様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別観測所)
   池神優司様(名古屋大学太陽地球環境研究所・母子里観測所)
   加藤泰男様、濱口佳之様、山本優佳様、足立匠様(名古屋大学太陽地球環境研究所・技術職員)
   ロシア科学アカデミー極東支部・宇宙物理学及び電波伝搬研究所(IKIR, FEB RAS)


オーロラと低緯度オーロラのかんたんな解説
 

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