北海道で観測された低緯度オーロラ (2023年12月1日)


2023年12月1日午後10時13分、陸別町ポントマムの北海道-陸別HFレーダーサイトで 撮影された低緯度オーロラの写真。左側で地平線近くに赤く光っているのがオーロラの発光。 提供:名古屋大学宇宙地球環境研究所 西谷望准教授。


2023年12月1日午後8時から翌日4時頃(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学
宇宙地球環境研究所の陸別観測所及び母子里観測所で、磁気嵐に伴う低緯度オーロラを
観測した。このオーロラはこの日の朝から開始していた磁気嵐の急激な発達に伴って
発生している。このオーロラの最大の明るさは、酸素原子の発光輝線である波長630nmの
赤い光で母子里観測所で5 kR(キロレイリー、明るさの単位)、であった。

観測は高感度全天カメラ(陸別)、磁力計(陸別、母子里)、北の空を見ている3波長
フォトメータ(陸別、母子里)を用いて行われた。以下にその図を示す。今回のオーロラは
肉眼でもある程度見える明るさである(肉眼で見える波長630nmの赤い光の明るさは
個人差はあるが数kR程度)。


1. All-Sky Images at 630nm in Absolute Intensity in False-Color 
波長630nmの赤い発光を全天カメラでとらえた画像。光の強さをレイリー単位で
疑似カラー表示で表す。魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。
画面の中心が天頂。露出は40秒。東西から南の地平線近くに見えているのは、
魚眼レンズの上に乗っているシャッターの羽。時刻はUT(ユニバーサルタイム)で、
日本時間にするためには9時間を加える。

観測開始(08UT=17JST)から10UT(19JST)までは何も見られないが、11UT(20JST)から
東に月が昇った頃に、北の地平線近くにオーロラが現れ、13UT(22JST)付近で
北の空に拡がって2kR位まで明るくなっていることが分かる。その後、オーロラは
徐々に暗くなって17UT(02JST)付近で一旦ほとんど消えるが、18UT(03JST)頃に再度、
少し明るくなっていることが分かる。

2. All-Sky Images at 557.7nm in Absolute Intensity in False-Color 
波長557.7nmの緑の発光を全天カメラでとらえた画像。光の強さをレイリー単位で
疑似カラー表示で表す。魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。
画面の中心が天頂。露出は30秒。上の630nm(赤い光)の画像と違い、北の方角に
特に明るい発光は見えない。北西方向に見える光は陸別の街明かり。時刻はUT
(ユニバーサルタイム)で、日本時間にするためには9時間を加える。

3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu
12月1日に陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向地平線から
15度を見ているフォトメータによる北の空の明るさ。下の3つのパネルは地磁気の
H, D, Z(北向き、東向き、下向き)成分。00UTからH, D成分に大きな変動が見られ、
磁気嵐が開始している。09:20UT付近にH成分が急激に上昇しており、太陽風の圧力が
急に強くなったことが推測される。その後、10-11 UTにH成分が急激に減少し、
磁気嵐が急速に発達していることが分かる。

上の3つのパネルは北の地平線から15度の方角を見ている3波長フォトメータの
データ。この発達が最大になった11UT(20JST)から、波長630nmの赤い光(上から
3番目のパネル)の明るさが急激に上昇し、13UT(22JST)には2kR近くまで達している。
同時に観測している波長557.7nmの緑の光や波長427.8nmの青い光(上から1番目と
2番目のパネル)にはこのような増光は見られない。その後、この赤いオーロラは
15UT(00JST)位まで継続している。

地磁気のデータでは、その後、17:30UT頃にH成分が急に上昇して、強い磁気圏
サブストームが発生している事を示している。これに伴って、上記の全天カメラの
データで示したように、18UT過ぎに赤いオーロラが再度、増光している。
この図のフォトメータのデータでは、感度が十分ではなくて、この18UT付近の
増光は、はっきりは見えない。

4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri
12月1日に母子里で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向地平線から15度を
見ているフォトメータによる北の空の明るさ。下の3つのパネルは地磁気のH, D, Z
(北向き、東向き、下向き)成分。陸別と同様に、00UTからH, D成分に大きな変動が見られ、
磁気嵐が開始している。09:20UT付近にH成分が急激に上昇しており、太陽風の圧力が
急に強くなったことが推測される。その後、10-11 UTにH成分が急激に減少し、磁気嵐が
急速に発達していることが分かる。

上の3つのパネルは北の地平線から15度の方角を見ている3波長フォトメータの
データ。この発達が最大になった11UT(20JST)から、波長630nmの赤い光(上から
3番目のパネル)の明るさが急激に上昇し、13UT(22JST)には5kR近くまで達している。
同時に観測している波長557.7nmの緑の光や波長427.8nmの青い光(上から1番目と
2番目のパネル)にはこのような増光は見られないが、557.7nmは、630nmが最も明るい
時間帯に少し増工していることが分かる。その後、この赤いオーロラは明け方まで
継続し、18:30UT(03:30UT)付近に再度、5kR近くまで増光している。母子里の方が
陸別よりも少し北にあるため、より明るいオーロラが観測されていると思われる。

Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台
     横関信之様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・陸別観測所)
     池神優司様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・母子里観測所)


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