北海道で観測された低緯度オーロラ (2024年8月12日)


2024年8月12日日本時間の午後23時50分、網走市能取湖で撮影された低緯度オーロラの写真。ペルセウス座流星群も写っている。提供:陸別町銀河の森天文台 津田浩之館長。


2024年8月12日午後20時から翌日03時過ぎ(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学
宇宙地球環境研究所の母子里観測所及び陸別観測所で、磁気嵐に伴う低緯度オーロラを
観測した。このオーロラは前日朝から開始していた大きな磁気嵐の主相において
発生している。このオーロラの最大の明るさは、酸素原子の発光輝線である波長630nmの
赤い光で母子里観測所で約0.8 kR(キロレイリー、明るさの単位)、であった。

観測は高感度全天カメラ(陸別)、磁力計(陸別、母子里)、北の空を見ている3波長
フォトメータ(陸別、母子里)を用いて行われた。以下にその図を示す。


1. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri on August 12, 2024
8月12-13日に母子里で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向地平線から
15度を見ているフォトメータによる北の空の明るさ。下の3つのパネルは地磁気の
H, D, Z(北向き、東向き、下向き)成分。8月12日01UTからH成分が大きく減り続けており、
磁気嵐が発達しつつある主相であることが分かる。15UT以降このH成分の減少がだんだん
戻ってきており、磁気嵐が回復相に移りつつある事が分かる。

上の3つのパネルは北の地平線から15度の方角を見ている3波長フォトメータの
データ。波長630nmの赤い光(上から3番目のパネル)の明るさが観測開始時から前日に
比べて大きく上昇しており、15UT頃(日本時間の24時)に0.8kR付近まで達している。
同時に観測している波長557.7nmの緑の光や波長427.8nmの青い光(上から1番目と2番目のパネル)
にはこのような増光は見られない。その後、この赤いオーロラは明け方近くの18UT過ぎ
(日本時間03時)まで明るさが減少しながら継続している。

2. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri on August 11, 2024
比較のために、前日である8月11-12日に母子里で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から15度を見ているフォトメータによる北の空の明るさ。図の様式は
上と同じ。8月11日06UT頃から地磁気が変動し始め、磁気嵐の初相が始まっている。
上に示した12-13日のデータに比べて、赤い光はほとんど増光しておらず、オーロラは
出ていないと考えられる。

3. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu on August 12, 2024
8月12-13日に陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向地平線から15度を
見ているフォトメータによる北の空の明るさ。地磁気の変動は母子里で見えるものと
ほぼ同じ。上の3つのパネルは北の地平線から15度の方角を見ている3波長フォトメータの
データ。残念ながらこの晩は陸別はほとんど曇っており、上の3つのパネルのフォトメータの
データには増光は見られない。但し17UT付近に短時間だけ、赤い光(630nm)が増光している
部分が見られる。この時間帯は、同じ場所で観測している高感度全天カメラでも、北の空だけ
波長630nmの赤い光だけが増光して、波長557.7nmの緑の光が増光していないので、短い時間だけ
晴れて、オーロラが観測されたと思われる。その明るさは0.6kR程度。

3. All-Sky Images at 630nm and 557.7nm in False-Color at Rikubetsu 
陸別で波長630nmの赤い発光と波長557.7nmの緑の発光を全天カメラで観測した画像。
光の強さをカウント値で疑似カラー表示で表す。魚眼レンズの像なので、上が北。
左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。露出は赤が40秒、緑が30秒。東西から
南の地平線近くに見えているのは、魚眼レンズの上に乗っているシャッターの羽。
時刻はUT(ユニバーサルタイム)で、日本時間にするためには9時間を加える。

観測開始(12:33 UT = 21:33 JST)から観測終了(17:30 UT = 02:30 JST)まで、
ほぼ曇っており、北西に街明かりが見える。17:03:35 UTの赤の画像には、
北にオーロラによる発光が見られる。ほぼ同時刻の緑の画像には発光が見られないため、
赤いオーロラを観測したものと思われる。
Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台    横関信之様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・陸別観測所)    池神優司様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・母子里観測所)     加藤泰男様(名古屋大学全学技術センター)     山本優佳様(名古屋大学全学技術センター)     足立匠様(名古屋大学全学技術センター)

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