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2025年11月12日18時頃から23時頃(日本時間)にかけて、北海道にある名古屋大学宇宙地球環境研究所の 陸別観測所・母子里観測所で、磁気嵐に伴う低緯度オーロラを観測した。このオーロラは11月12日の 9時9分から開始した強い磁気嵐の主相で発生した強いサブストームに関連して発生している。 このオーロラの最大の明るさは、酸素原子の発光輝線である波長630nmの赤い光で陸別観測所で 約2kR(キロレイリー、明るさの単位)、母子里観測所約4kRであった。 観測は北の空を見ている3波長フォトメータ(陸別、母子里)と磁力計(陸別、母子里)、 カラーカメラ(陸別)を用いて行われた。以下にその図を示す。
1. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu and Moshiri on November 12, 2025 11月12日に陸別(左)と母子里(右)で観測された磁場変化(時刻はUT、日本時間ー9時間)と、 北の方向地平線から15度を見ているフォトメータによる北の空の明るさ。下の3つのパネルは 地磁気のH, D, Z(北向き、東向き、下向き)成分。11月12日00 UTから01 UTに向けて急激に H成分(北向き成分)が減少し、強い磁気嵐が開始したことが分かる。その後、H成分は 変動しながら増え始め、オーロラが表れた09 UT過ぎに強く正に振れ、磁気圏サブストームが 発生したことがわかる。 上の3つのパネルは北の地平線から15度の方角を見ている3波長フォトメータのデータ。 波長630nmの赤い光(上から3番目のパネル)の明るさが、09-14 UT(日本時間18-23時)に はっきり上昇しており、カラーカメラで撮影された赤いオーロラの画像に対応した増光を 示している。同時に観測している波長557.7nmの緑の光や波長427.8nmの青い光(上から 1番目と2番目のパネル)にはこのような増光はほとんど見られない。母子里の増光が 激しく振動しているのは原因不明であるが、雲の影響の可能性がある。2. All-Sky Images at 630nm and 557.7nm in Absolute Intensity in False-Color at Rikubetsu 陸別で波長630nm(左、赤色)と557.7nm(右、緑色)の発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを絶対強度であるレイリー(=10^6/4π photons/cm2/s/sr)単位で疑似カラー表示で表す。 魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。露出は630nmが 40秒、557.7nmが30秒。東西から南の地平線近くに見えているのは、魚眼レンズの上に乗っている シャッターの羽。時刻はUT(ユニバーサルタイム)で、日本時間にするためには9時間を加える。 波長630nmの画像(左)に、観測開始(10:03 UT = 19 :03 JST)から12:31 UT (= 21:31 JST)まで、 北の地平線近くにオーロラによる発光が見られる。波長557.7nm(右)にはこのようなオーロラ 発光はみられない。3. All-Sky Images at 630nm and 557.7nm in count rate in False-Color at Rikubetsu 陸別で波長630nm(左、赤色)と557.7nm(右、緑色)の発光を全天カメラでとらえた画像。 光の強さを絶対強度に変換する前のカメラのカウント値で疑似カラー表示で表す。図の様式は 上の絶対強度の画像と同じ。背景光を引いていないので、後半の時間帯には月が出ていることが わかる。 波長630nmの画像(左)に、観測開始(10:03 UT = 19 :03 JST)から12:31 UT (= 21:31 JST)まで、 北の地平線近くにオーロラによる発光が見られる。波長557.7nm(右)にはこのようなオーロラ 発光はみられない。Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台 横関信之様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・陸別観測所) 池神優司様(名古屋大学宇宙地球環境研究所・母子里観測所) 加藤泰男様(名古屋大学全学技術センター) 山本優佳様(名古屋大学全学技術センター) 足立匠様(名古屋大学全学技術センター)
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