北海道で観測された低緯度オーロラ (2002年4月18日)


上は2002年4月19日午前1時30−42分、下は 2002年4月20日午前1時0−12分、陸別町・私設陸別 天文台で撮影された低緯度オーロラの写真。地平線近くに見える 白い光は遠くの街明かり。その上が薄赤くなっているのが 弱いオーロラ。 露出12分、レンズ16mmf2.8 iso-800 コニカ   提供:陸別町 津田裕之さん 詳しくはここを参照


平成14年4月18日午前0−3時頃(日本時間)にかけて、
北海道にある名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別総合観測室で、
発達中の磁気嵐において低緯度オーロラを観測した。
このオーロラは前日の午後8時6分(日本時間)から始まった
磁気嵐の主相において発生している。このオーロラの最大の明るさは
約700R(レイリー、明るさの単位、観測波長は酸素原子
の発光輝線である630nm)であった。
肉眼ではおそらく見えない程度の明るさであろう。全天カメラの画像では、
明け方の薄明光(北東)や陸別の街明かり(北西)と区別が付きにくいが、
フォトメータで計測した発光強度が、通常時に
比べて大きく増光しているので、オーロラであることがわかった。

 観測は掃天フォトメータ、全天カメラ(魚眼レンズ付き)、磁力計、
固定型フォトメータを用いて行われた。以下にその図を示す。


1. Photometer Plot                    
掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光(酸素原子)
で、グラフの下の方が北、上の方が
南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の
強さが、午前0時頃から3時に向けて、北の方角で、急激に
明るくなるのがわかる。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 
陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
16時UT頃(日本時間で1時頃)から北の空が明るくなり、
オーロラに伴う増光が見える。露出は2分45秒。
画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。画面の右上(北西)の
方向に見えるのは、陸別の街明かり。また、17時30分以降に北東の
空が明るくなるのは、オーロラによるものと明け方の薄明光(太陽光)に
よるものが混ざっていると思われる。

3. North-South Cross Section of All-Sky Images at Rikubetsu 
上記2の陸別の630nm全天カメラ画像を南北に輪切りにし、
時間的に並べた図。光の強さを疑似カラー表示で表す。
15−18時UT(日本時間の18日午前0−3時)に
北の空の発光がどんどん明るくなり、オーロラが現れているのがわかる。
16時UT(日本時間の1時)頃には、北から南へ伝搬する
ような構造が見えるが、これはオーロラに伴って発生した
大規模な大気の波が、電離層高度を赤道に向けて伝わっている
ことを表している。

4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu  
陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向
地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
11時6分UT(日本時間の20時6分)から磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が大きく減少している。
フォトメータのデータには、630nmの
光が15時UT以降、徐々に強くなっているが、このフォトメータは
感度があまり高くないために、はっきりしない。

5. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 
同じ日に陸別から約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の
母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
11時6分UT(日本時間の20時6分)から磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が大きく減少している。
母子里のフォトメータでは、オーロラは見えていない。

6. Photometer Plot - 2  
陸別の掃天フォトメータ(No.3)のデータ。このフォトメータの
観測波長はオーロラの486.1nm(水素原子)と427.8nm
(窒素分子イオン)を非常に高感度で計測している。
下から2番目のグラフで、427.8nmの光が、北の空(点線)の
もののみ、02−03時(日本時間)に増光していることが
わかる。この波長の発光は、高エネルギー電子の大気への降り込みを
示唆していて非常に興味ぶかい。
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この磁気嵐ののち、日本時間で4月19日の明け方、4月20日の
明け方にも、陸別で630nmの増光が見られた。通常時よりも
明るいことから、継続して起こっている磁気嵐に伴うオーロラ
と言えるが、明るさのレベルは非常に低い。特に後半の時間帯は、
上記の4月18日の場合と同様、薄明光と混ざってしまい、
区別が付きにくい。4月20日未明の01−02時頃は、
薄明光の影響、陸別の町明かりの影響も無く、北の方角に
わずかに630nmの発光が同定できる。以下に、4月20日
のデータを示す。
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1. Photometer Plot 
掃天フォトメータのデータ。観測波長はオーロラの630nmの光(酸素原子)
で、グラフの下の方が北、上の方が
南の光の強さを表す(天頂角は図の左に示した)。630nmの光の
強さが、午前1時頃から3時に向けて、北の方角で、急激に
明るくなるが、後半の時間は薄明光の影響も含まれる。

2. All-Sky Images in False-Color at Rikubetsu 
陸別で、波長630nmの発光を全天カメラでとらえた画像。
光の強さを疑似カラー表示で表す。
魚眼レンズの像なので、上が北。左が東。右が西、下が南。画面の中心が天頂。
16時UT頃(日本時間で1時頃)に北の空の地平線近くがわずかに明るくなって
おり、オーロラと思われる。露出は2分45秒。それ以降の時間は、薄明光に
よる増光が北東に見られる。
画面の上に出ている時刻はUT(グリニッジ
標準時)なので、日本時間に直すには9時間加える。画面の右上(北西)の
方向に見えるのは、陸別の街明かり。

3. North-South Cross Section of All-Sky Images at Rikubetsu 
上記2の陸別の630nm全天カメラ画像を南北に輪切りにし、
時間的に並べた図。光の強さを疑似カラー表示で表す。
15−16時UT(日本時間の18日午前0−1時)にみえる
北の空の発光は弱いオーロラであろう。それ以降の増光は薄明光と
オーロラが混ざっていると思われる。

4. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Rikubetsu  
陸別で観測された磁場変化(時刻はUT)と、北の方向
地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
8時35分UT(日本時間の17時35分)から新たな磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が減少している。
このフォトメータは感度があまり高くないために、オーロラ
の発光ははっきりしない。

5. Magnetic Field and A Northward-Looking Photometer at Moshiri 
同じ日に陸別から約150km離れた名古屋大学太陽地球環境研究所の
母子里観測所で観測された磁場変化(時刻はUT)と、
北の方向地平線から20度を見ているフォトメータのデータ。
8時35分UT(日本時間の17時35分)から新たな磁気嵐が始まり、
H成分(北向き成分)が減少している。
このフォトメータは感度があまり高くないために、オーロラ
の発光ははっきりしない。

6. Photometer Plot - 2  
陸別の掃天フォトメータ(No.3)のデータ。このフォトメータの
観測波長はオーロラの486.1nm(水素原子)と427.8nm
(窒素分子イオン)を非常に高感度で計測している。
下から2番目のグラフで、427.8nmの光が、北の空(点線)の
もののみ、増光していることが
わかる。この波長の発光は、高エネルギー電子の大気への降り込みを
示唆していて非常に興味ぶかい。

Special thanks to: 陸別町銀河の森天文台
            花野和生様(名古屋大学太陽地球環境研究所・陸別総合観測室)

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